この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
私の前にはお任せのカクテル、そして祐くんの前にはヘネシーのロックが置かれている。
「ハハ、だって俺。のんには昔からベタ甘だし?」
「…分かってる」
そう、彼の言うとおりだ。柚ちゃんが私に甘いと言っても、祐くんとは比にならない。
「だろう?」
こんな時にもニッコリ笑う祐くんが、よけいに言葉を紡げなくさせるのに。
この笑顔にドキドキしながら、いつもすがって、甘えてばかりだったね?
許して貰えるとは思えない…、その気まずさから彼の目を見られずにいれば。
「でも、のんを抱いた事は忘れないよ。
妹みたいに可愛かったのも事実。でも、女としてみてたのも事実だから。
辛さもあるけど許してる時点で…やっぱり、のんは俺にとって可愛い妹なんだろうな…」
いつもの表情から、フッと自嘲笑いを浮かべた彼にズキンと痛む心だけど。
「祐くん…、ごめんね」
なんと言って良いのか分からず謝罪をすれば、頭をポンポンと優しく撫でられた。