この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
コツ、コツ、と革靴音を響かせてやって来たのは、紛れもなく尭くんだから…。
いやいや。一応“祐くんとバーで会う”と、事前報告をしたのに。
朝の尭くんってば、“あ、そう”って簡素な返答だけだったよね!?
「当たり前じゃん。大事な大事な娘を、とうとう嫁に出す気分だし?」
「っ、ゆ、ゆーく…!」
挑発するような口調で私の頬にキスを落とし、ニヤリと笑った祐くんに目を見張れば。
「よく言う」
「フッ…余裕ないと大変だぞ?
ウチのお姫さんは、意外に泣き虫なんだから」
や、優しい…、やっぱり祐くんは優しすぎるよ、と感激していれば。
「余計なお世話――つーか、甘やかすのも問題だろ。
そうやってアホを甘やかすから、ソイツは未だにヘタレなんだよ。ついでに男を見る目もゼロ」
おいおい、待ってくれ。ソレだと貴方もダメンズに該当しますけど?