この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
すると私の隣へと腰を下ろした尭くんが、ハハッと珍しく笑うから驚かされる。
「やっぱ祐史さんには敵わねぇ」
この上司様ともいえる負けず嫌い男に、そう言わしめるのだから。
祐くんの人間味の大きさは計りしれない。
「…うん、そうだよね」
だから私では、やっぱり祐くんの真意を探れる筈など無かったと思う。
ただ甘えるだけで、彼の安らげる場所を作ってあげる事は出来ないだろうし…。
「は?」
「あ、でも。尭くんも少しは優しいかなー?
職場も落ち着かせてくれて、これで頑張れそうな気がする」
「アホ――つーか、女って面倒くせぇ」
よく言うよ。“どうでも良い”が口癖だったクセに。
そのスタンスを壊して、女子の面倒に首を突っ込んでくれたのは誰ですか…?