この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
相変わらずうるさかった女子社員のボス的存在へ、ものすごい冷たい眼差しを向けて。
“俺の彼女に何か不満でも?”と、一喝してつけ入る隙をゼロにしてしまったのだ。
眼力のある男は、得にも損にもなるうるみたいだけども。
今回ばかりは、ようやく安住の地が戻りつつあって得したな私。
「知るか…――コニャックとマルガリータでお願いします」
そうスルーしたスクエアメガネのフレームの奥の瞳は、やっぱり呆れているけども。
「たまには“恋人”同士――オソロでマルガリータにしようよ?」
「…どこで仕入れた?アホのクセに」
「フフー、頼ってばかりじゃダメだしね」
「ああ。そのカラカラな脳内にも、少しは知識入れろ」
「尭くんって、ホント失礼!」
「教育だろ?アホの面倒も大変だ」
こうやって憎まれ口を叩くのだって、私へ向けた優しさだと分かっているから笑顔になれる。