この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
カレカノは無理だったとかで、アッサリ祐くんと円満に別れた人だもの。
「ちなみに柚ちゃん、今からヨリ戻すとか…」
「天と地がひっくり返ってもゼロ。
あんなシャボン玉みたいなヤツとの過去は、既に脳内デリート済みよ」
淡々とフォークでケーキをカッティングして口へ運ぶから、まるで他人事に思えてならない。
「アイツとは色んな意味で合わないの」
「柚ちゃんが言うと、何で生々しいんだろう?」
「経験の差よ」
商談を終えたばかりの彼女をキャッチしたのは、実家近くのひいきのホテル。
どうやら仕事終わりの一本を吸えない状況が、ご機嫌を損ねているようだ。
現在は親友というより犬猿の仲の関係が、2人には心地良いらしい。
私はそんなやり取りをスルーしながら、たまに祐くんに慰めて貰う身分だった筈なのに…。
「私、軽いなー…」
まだ数時間前だからか、身体の芯に残る気だるさに溜め息をついてしまう。