この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
フツーなら、姉の元彼と寝たと本人に報告するなんてオカシな話だけども。
今の2人の“奔放な諸事情”を知っているし、何よりサッパリしすぎな柚ちゃんだから許される。
もう色んな意味で、ドンマイ私――…
「のんは軽くないわ。ただ傷心につけ込まれただけよ。
そもそも軽いっていうのは、」
「とにかく女大好きな、シャボン玉の祐兄だって」
柚ちゃんのフォローを遮って、さらなる重石を被せた耳慣れた重低音の声。
「恭ちゃん!」
「ったく、貴重な休みを…」
ブツブツと呆れた物言いをしながらも、私の隣の席へと腰を下ろした彼。
「私のセリフ横取りね」
「人聞き悪いって、柚さん」
だけども、携帯を操作しながらの強烈な一言には簡単に屈するから。
「そーいうトコ、やっぱ兄弟だわ」
ソレがまた、柚ちゃんのご機嫌が悪化する材料となるのだ。