この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
取り敢えず、ピンチで味方になってくれる人――
そもそも友だちには、事細かに言ってしまえる男が相手じゃない。
というより…、間違いなくアノ話は反感を買うだけだ。
「ひでー…俺までシャボン玉」
「あら、アイツは喜ぶわよ?皮肉たっぷりでもね」
「恭ちゃんは大丈夫だって。まだ」
「おいおい、フォロー半端すぎ。
――にしても、のんまで毒牙にかかるとはなぁ」
そうなれば柚ちゃん以外でヘルプを出せたのは、祐くんの弟である恭ちゃんしかおらず。
なけなしの知能を駆使して呼び寄したけど、やっぱり私はバカのようだ。
「ああー…、同じ顔ってツライ」
「失礼すぎだろ」
「最悪だ…」
「おいコラ」
近距離で窺って来る恭ちゃんの眼が、やたらと朝の情事を思い起こさせる。
“っ、もう二度と会わない…!”
“のんは絶対、また俺を求めるよ”
「っ、ちがうー…!」
私の脳内は一夜と翌朝だけで、一気に祐ちゃん毒に占領されたのか…?