この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


呆れた口調で言うなら何で数えたの?と、ハッキリ言い返したい。



「顔に出てるぞ、アホ」


「っ、いた…」

彼が手にしていた資料がパシッと軽い音を立てて、私の頭へ見事にクリーンヒットした。



仕事中の彼は部下として尊敬するくらい、的確な指示を与えて推し進めているけども。


こういう時はいつも、権力のある役付けが憎らしく思える瞬間だ。


せっかくのヘアスタイルを崩しかねない、不意の仕打ちに小さく不満を漏らせば。



「大袈裟」


「・・・」

心配なんてする方がアホらしい、そう顔に書いてありますが…?


ペラペラの紙の集合体なんて痛くも何とも無いけど、明らかにチーフは冷たすぎると思う。


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