この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


特に思案していた女性の方は、儚さを感じる見た事の無い美しさを放っていて。


もう一人の女性もそうだけれど…、とても気品ある空気がコチラまで伝わってくる。


間違いなく、このデパートのお得意様だろう――



「お客様、ぜひご試着だけでも如何でしょうか?
大変お似合いになられると思いますので…」

これは売上ゲットとか、そういう悪心からお世辞を言った訳では無く。


この優しい印象の女性が着れば、きっと誰よりも似合う気がしたの。


拙いなりにデザイン元である私は、その姿を見てみたかったのだろう…。



「お姉さんもこう言ってくれるし…蘭、試着してから考えようよ」


「う、うん…、ではお願い出来ますか?」

ご友人さんからのもうひと押しが入ったコトで、ようやく頷いてくれた。



「ありがとうございます――では、コチラへどうぞ」

トルソーが纏っていたトップスに、同じく新作のクロップドパンツを外すと。


「はい」

ニッコリ微笑んだ女性に、つられて笑いながら試着スペースへと案内した…。


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