この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
洋服を手渡してフィッティングルームのドアを閉めると。
もう一人の女性が、ブラックレザーのスツールへと腰を下ろした。
長い脚をサラリと組んで店内を一瞥するように、視線を送る姿がサマになるから。
美麗な人は、無意識に所作がキマるよね…――
「うん…、やっぱりアレが一番ですね」
「――え?」
何かを納得したのだろうか、ポツリと紡がれた言葉に目を丸くしてしまう私。
「あ…――主語が抜けてましたね。
蘭…彼女が試着したお洋服がイメージにピッタリだなと思って。
いつもよりラフで大人っぽいけど、彼女の可愛さは崩さないデザインを探していたから…」
「あ、ありがとうございます…!」
まだ閉じたドアへ視線を移し答えてくれた女性に、じんわりと嬉しさが込み上げて来る。