この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
やっぱり自社について褒められると、隠しきれないほど素直に嬉しいな…。
「お客様方はとってもお綺麗ですし、何をお召しになられてもピッタリだと思いますけど。
先ほどのお客様は絶対に、アノ新作がお似合いになられます!」
思わず引かれそうなくらい、力を入れて率直な思いをぶつけてしまったけど。
ラクガキから生まれたアレも、きっとあの女性にピッタリと思えてならないのだ。
「ふふ、お姉さんの声が決め手ですね」
「はい、ぜひ!」
「蘭が聞いていたら、照れそうですけども」
こういう生の声を伺えるのが、この仕事の素敵なトコロだろう。
お客様のプライベートをほんのり覗かせて頂くからこそ、言葉選びは慎重になるけど。
笑顔を返して貰えた時は、こちらの方が充実感に包まれるのだから…。
そう会話に夢中になっていれば、フィッテイング・ルームのドアが開いてしまった。