この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
デパートを出た私は銀座の人の群れに身を任せ、地下鉄を目指してトボトボ歩いていた。
残された仕事を考えると、優先事項が勝手に導き出されてしまう。
「…連絡、しないと」
バッグから携帯電話を取り出し、重い溜め息をついてメモリを呼び出す。
ストールを確実に手渡せる、桜井 祐史の名前だ――
いつでも優しい祐くんに、無条件で甘えられる妹でいられた筈なのに。
酔い潰れて関係を持ってしまったコトが、そもそも間違いだった。
だけど祐くんのコトを今は幼馴染みと言えるか、そう問われればノーだろう。
「…バカみたい」
こんなツマラナイ感情を抱けば、余計に自分を惨めにするだけだ。
そもそもフラれて祐くんにすがった私が、関係を変えてしまったのに――