この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
その瞬間、プルル…と無機質に流れるコール音が緊張感を高めていく。
オカシイと分かっていても、止まらない鼓動が悔しさばかりを募らせる。
「――はい」
すると4コール目の途中で、単調な音が何時もの優しい声色へと切り替わった。
「あ、え、と…」
「のん?」
「え…えーと、は…はい?」
勢い任せに電話をしたとはいえ、そのひと声ですっかり頭が真っ白になった私。
「ハハ、何だソレ」
「っ、祐くんが悪いのよ…!」
だというのに――ソレを軽く笑わられてしまい、ムッと口を尖らせて答えてしまう。
「のんが意識しすぎ。そんなに…」
「そ、それより…っ、話があるの…!」
「なに?」
そんな彼の口ぶりから“この前のコトは気にするな”と、言われそうな気がして。
バクバクうるさい心の動揺を押し留めるように、自然と声を張って話を遮っていた。