この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
これはその日限りの甘い言葉に自惚れて、舞い上がっていただけのコト。
もしコレで何かを言えば、祐くんとの兄妹関係すらゼロになりかねない。
だから泣いたりしない…、悲しいなんて感情が間違いだもの。
負けたくないから…、アノ日の事は忘れなきゃダメだね――…
「オマエ何してたんだよ」
飲みかけのカフェラテを置き去りに、どんよりムードを携えて帰社した私。
「…すみません」
鬼の軍曹のような尭くんと対峙しつつも、なぜか怖いと思えない現在。
「アホは体力使ってナンボだろ。
移動時間もムダにすんな」
「…すみません」
「おい」
「…すみません」
抜けがら状態でも謝罪だけは、バカのひとつ覚えみたく繰り返していた。