この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
そんな私に呆れてか、いつも以上に大きく溜め息を吐かれてしまった。
インテリチックなメガネの奥の瞳が、キラリと光った気もするけど。
もう何でもイイよ、今さらどう足掻こうにもアホさ加減は治らないし…。
「オマエ、今日19時で上がれ」
「・・・へ?」
「バカな返事するなっての。コレは決定事項」
あまりの横暴発言に目をパチクリさせれば、またバカにした眼差しを向けて来る。
そうですか、アホの次はバカですか――…
「早く仕事しろ」
「いたっ…!」
本日二度目の書類のクリーンヒットに、正直に顔をしかめてあげたのに。
「ウソ吐け」
大袈裟ぶりを証明するように、手にしていた書類で私の頭を再び叩いて去ってしまった。