この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
どうやら残業はあるものの、いつもより少し早く終われるようだ。
シレっとした顔で戻った尭くんがやたら腹立たしいけど、諦めながら席へと着けば。
「ホント、望未は良いよねぇ」
「何がですか?」
先輩の泉さんが呑気な声を響かせると、隣の席からヒソヒソ声で話し掛けて来た。
「何がって…イイ男じゃんチーフ。
望未のコトよく分かってるし、優しいよねぇ」
誰に対してもフランクな泉さんは、先輩ながらお姉さん的存在だけど。
「どこがですか…!」
さっきの恐ろしい発言に関しては、ブンブンと大きく頭を振って否定した。