この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
一瞬そして、変化。


とはいえ、エレベーターを降りて正面玄関を出るまでが難所を極めている。


長い足でスタスタと歩く、尭くんの1メール後ろを偶然を装ってついて行けば。



「ストーカーかお前は」

突然にピタリと歩みを止めた彼が、くるりとその身を翻し酷いレッテルを貼ってきた。



「…パワハラ」


「アホを指導すんのは上司の務めだ」


この有無を言わせぬ上司様発言には、どう返せばいいのだろう?


私の頭で良いセリフも見つからず、ジーっと恨みの込もった視線を彼に送るだけ。



2人きりの帰宅がバレるのは嫌だから気を使っていたのに、ソレを水の泡にしてくれた挙句。


社内では人気の彼と対峙したせいで、また社内女子から睨まれる私。


仮にも経営者の娘ですけど、これは立場低すぎでしょう。


< 62 / 178 >

この作品をシェア

pagetop