この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
一瞬そして、変化。
とはいえ、エレベーターを降りて正面玄関を出るまでが難所を極めている。
長い足でスタスタと歩く、尭くんの1メール後ろを偶然を装ってついて行けば。
「ストーカーかお前は」
突然にピタリと歩みを止めた彼が、くるりとその身を翻し酷いレッテルを貼ってきた。
「…パワハラ」
「アホを指導すんのは上司の務めだ」
この有無を言わせぬ上司様発言には、どう返せばいいのだろう?
私の頭で良いセリフも見つからず、ジーっと恨みの込もった視線を彼に送るだけ。
2人きりの帰宅がバレるのは嫌だから気を使っていたのに、ソレを水の泡にしてくれた挙句。
社内では人気の彼と対峙したせいで、また社内女子から睨まれる私。
仮にも経営者の娘ですけど、これは立場低すぎでしょう。