この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
インテリチックなメガネの奥の眼差しを逸らすと、小さく溜め息が出るのも仕方ない。
ドンマイ私…って、今日思ったの何回目だろう…?
「どーでも良いから行くぞ」
「うわ…っ」
すると、不意打ちとはまさにこの事だ。
皆の憧れの尭くんにはコレは慣れっこなのか、“どーでも良いコト”のようで。
その手で腕を掴まれた私の身体は傾き、グイグイと出口へ一直線に引っ張られて行く。
「あのですね?離して、くれませんか…?」
ますます強まる周囲の視線に耐え切れず、アハハ…と苦笑混じりにお願いすれば。
「は?俺は気にしてねぇもん」
私を引きずるように先導する尭くんには、これもまた効果ゼロだったようだ。
いやいや――気にしてくれなきゃ、コッチは困ります。
コレだとまるで、私と尭くんが付き合ってるみたいじゃない…!