この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
会社を出てしまえば最後、昔からの顔馴染みという関係に戻れるからだ…。
「ふーん…、早く行くぞ」
道すがらの恥さらしなカミングアウトも、この男には“どうでも良い”らしい。
こうも華麗にスルーされると、私が勝手にバカさ加減を露呈しただけではないか。
「迷惑だから止まんな」
悔しさ紛れにピタリを動きを止めたのも、これだとムリは無いでしょう?
だけども私には、もうひとつ歩みを止めた大きな理由があったのだ。
「・・・て」
「て、って?」
何となく近距離からのオーラが恐ろしくて、ポツリと呟いてみたものの。
「っ、だから…!」
明らかに何をさすのか分かっていて尋ねた彼を、ギッと睨みつけたくもなる。