この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
この柔らかさは何度となく体感して来た、間違えようのないキスと分かってても。
柚ちゃんみたいに、ニッコリ笑顔で対処する術を持っていないのだ。
あまりに唐突なソレで脳内はプチ・パニックとなり、目をパチクリさせていれば…。
「んな顔してるオマエが悪い」
そうアッサリと言いのけ、ようやく離れた大きな手が、今度は私の髪を撫で下ろした。
人の唇を簡単に奪っておきながら、なんという言い草だ…!
と言う気力も湧かず、街並みに照らされたメガネの奥の瞳に釘づけの私。
まるで射るように鋭いというのに、どこか優しい色に映るのはなぜ…?