この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
だけれどクールな様相の彼から前触れもなく、スッと差し出された手に驚かされる。
今度は手首ではなく手を捉えて、キュッと包むように握ってくれるから。
「・・・っ」
その自然な素振りのせいか、こんな時にドキドキと高鳴る鼓動が恨めしい。
明らかに動揺する私は、最近の中学生にすら勝てるほどの純情ぶりな気がした。
振りほどこうと思えば、簡単に解けるほどの優しい力だったのに。
「懐かしいよね」
「アホ」
同調してくれない尭くんにムッと来るものの、なぜかソレに安堵する自分がいて。
行き先も分からぬまま、いつしかその手をキュッと握り返していた…――