この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
そうして進んで行った先はオフィス街からほど近い、飲み屋さんが集結した馴染みの地。
その中でも路地裏にある、ほの暗いバーまで導かれてオシャレな店内へと入って行った…。
「いらっしゃいませ」
若いバーテンダーさんの声で、ようやく離れた手がふと現実を呼び寄せながらも。
そのままスムーズな流れに乗じて、尭くんの隣のスツールへと静かに腰を下ろした。
「ジン・トニックとマルガリータで」
「ちょっと、私の…」
「どうせ決められねークセに」
「・・・」
こうも一言でバッサリあしらわれてしまっては、頬の膨らみも止まらない。
確かに一瞥した彼の言う通り、居酒屋ではビール専門でカクテルとは無縁だけど…。
「クスクス…」
「コラ伽耶、失礼だろ」
ふと綺麗な笑い声が少し離れた所から届き、ハッと我に返った私。