この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
ちょっと待って。いや、落ち着いて脳内辞書を整理しなければ。
ええと…、いつ私と尭くんが“カレカノ”なんてなりましたか?
「やっぱり!可愛いらしい彼女さんですね」
超特急で考えをまとめていると、パンと両手を合わせてニッコリ笑った女性。
「いえ、バカとアホの境を生きてるだけですから」
「ふふっ、ノロけてもバレバレですよ?」
いえいえ、私の意見がソコに何ひとつ入っていませんが…!
「お待たせしました、マルガリータでございます」
優しいBGMが流れる中で、溜め息よりも早く否定の声を上げようとした、まさにその時。
コトリとテーブル上で音を立て、繊細なカクテルグラスが目の前に出された。
「あ、ありがとうございます…」
肩すかしとは、まさにこんな心境の事なのだろう…。
「良かったですね」
「へ?」
意味あり気に笑ったバーテンダーさんに、私からは間の抜けた声が漏れるだけだ…。