この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
そのカクテルグラスを傾けると、ふわりとお酒の香りが鼻をつき喉を潤す。
まるで疲れていた心へ喝を入れるように、アルコールが駆け巡って目は冴えていく…。
「どう?」
「うん、美味しい!」
コクコクと首を何度も縦に下ろし、尭くんの問い掛けに頷いてしまう。
自分でアレコレ迷うより、頼んで貰って正解だったと思う。
「それは、ありがとうございます」
するとカウンター越しでシェイカーを振る、バーテンダーさんの耳にも届いたようだ。
「お世辞じゃなくて、おかわりしたいです」
「ハハ、それは良かった。
どうぞごゆっくり――」
お客さんキラーと思わせる笑みを浮かべ、別のお客さんの元へ行ったバーテンさん。
さっきの女性が少し不機嫌だけど…、大丈夫かな?
「やっと笑った」
「・・・え?」
そんな状況とカクテルを楽しんでいれば、隣からの小さな声に耳を疑った。