この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
紅潮さらに、一進。
捕らえられた手首が心苦しくて、根負けしたと言わんばかりに静かに顔を上げた私。
「望未…」
「え、と…、はい」
その先にある扇情的な眼差しが、内心で尭くんを急に“オトコ”へ変化させる。
先ほどの不意打ちのキスを思い起こさせように、薄めの唇がゆっくり名前を紡ぐから。
いつものようには、とても茶化せる状況じゃない――
「・・・ッ」
すると手首にかかる僅かな重みが取れた瞬間、その手が私の片頬にそっと触れた。