この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
いつもと違う態度に戸惑って、バクバクと煩い鼓動が止まらないのに。
ソレさえ読まれているのか、スルリと指先を動かす彼が恨めしい…。
「男にフラれたって言う割に、“何か”欲してる表情(カオ)だ」
「え、ちが…っ」
すると尭くんが尋ねて来たのは、私が胸の奥に隠していた想いだった。
「隠してもムダ。恭哉から聞いた」
「う、うそぉ…」
「ココで嘘吐くワケねぇだろ」
鋭く私を捉えているメガネの奥の瞳が、逃げられないぞと示しているから。
背中をツーと伝うイヤな汗が流れて、視線を彷徨わせるのが精一杯の心境だ。