この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
そう。アノ日に恭ちゃんにヘルプを求めた事で、尭くんまで伝わっていたようだ…。
祐くんは身体はすこぶる軽くても、案外口が堅い。
恭ちゃんは本命を大切にしても、おしゃべりさん。
男としてどっちが良いのか尋ねられると、これまた困るけどね…。
「…聞いてる?」
「え…、そうだね?」
至近距離から届いた低い声色に、ようやく乾いた笑いを浮かべた。
ああ仮にも上司な彼に“ソチラの事情”を知られていたとは気まずいモノがある。
ちなみに尭くんの“事情”は分からないけど、口はすこぶる堅いだろう…。
「――で。どうすんの?」
「な、なにが…」
「ハァ?オマエやっぱバカだろ」
頬を包んでいた手の感触が消えた瞬間、眉根を潜めてトンデモナイ失礼発言をされた。