この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


この賢い頭と色っぽい容姿の差は、一生かけても埋まらないだろう――…




「俺としては、可愛い子所望だけど」


「――遅い」

その発言を見事にスルーして、また新たな煙草へ火をつける柚ちゃん。



「仕方ねぇだろ?それなりに仕事してんの」

溜め息を漏らそうとした瞬間に颯爽と現れ、私の隣へと腰を下ろす男。



彼こそ私たちの幼馴染み、桜井 祐史(サクライユウジ)だ。


“ソレなり”と言うけど、あの天下の東条グループで取締役まで上った彼。


外見だけみれば、やたらお洒落な男のクセに――



「祐史ウザい」


「オマエそれでよく男が寄るな」


「アンタに言われたくないわ」

ソレでいて、柚ちゃんの高校時代の彼氏だったりもする。


まぁ、今となっては犬猿の仲に等しいけど。


辛辣なやり取りなんて当たり前と、今日もスルーでおつまみに手を出す私。


すると隣からスッと大きな手が伸びて来て、そのまま頭をポンポン撫でられた。



「――で、またヘンな男に引っ掛かったって?」


「…祐くんうるさい」


「はいはい」

あやすように撫でる手の大きさと、年齢を重ねるごとに渋みを増す声色。


男のクセに色気を放つ彼に、今日3股発覚したばかりの私は悔しさが募る。


< 8 / 178 >

この作品をシェア

pagetop