この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
この賢い頭と色っぽい容姿の差は、一生かけても埋まらないだろう――…
「俺としては、可愛い子所望だけど」
「――遅い」
その発言を見事にスルーして、また新たな煙草へ火をつける柚ちゃん。
「仕方ねぇだろ?それなりに仕事してんの」
溜め息を漏らそうとした瞬間に颯爽と現れ、私の隣へと腰を下ろす男。
彼こそ私たちの幼馴染み、桜井 祐史(サクライユウジ)だ。
“ソレなり”と言うけど、あの天下の東条グループで取締役まで上った彼。
外見だけみれば、やたらお洒落な男のクセに――
「祐史ウザい」
「オマエそれでよく男が寄るな」
「アンタに言われたくないわ」
ソレでいて、柚ちゃんの高校時代の彼氏だったりもする。
まぁ、今となっては犬猿の仲に等しいけど。
辛辣なやり取りなんて当たり前と、今日もスルーでおつまみに手を出す私。
すると隣からスッと大きな手が伸びて来て、そのまま頭をポンポン撫でられた。
「――で、またヘンな男に引っ掛かったって?」
「…祐くんうるさい」
「はいはい」
あやすように撫でる手の大きさと、年齢を重ねるごとに渋みを増す声色。
男のクセに色気を放つ彼に、今日3股発覚したばかりの私は悔しさが募る。