この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
優しいジャズ音楽が流れる中で、思わずゴクリと息を呑みたくなる表情を前に。
私は上手く動かせない口唇に、ひたすら嫌気がさしそうだった。
「そ、そんなの…、あ、尭くんには関係…」
「関係あるよ」
膝上でギュッと拳を握り、ようやく紡げた言葉をアッサリ被せられて。
「・・・なんで?」
ココで目を逸らせば負けと、いつもと表情の変わらない彼を睨みつけた。
「どうして、か…」
するとそんな私とは対照的に、どこか哀しげにも見える自嘲気味な笑みを浮かべる彼。
するといつの間にか置かれていたグラスを彩る、ウイスキーを口にした。