この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
心配そうに窺ってドアを閉める彼女に謝りを入れ、慌てて去ろうとすれば。
「あ、待って!ごめんね?その、話が聞こえちゃったから心配で…。
なんか悩んでるみたいだし、お節介とは思うんだけどやっぱり…」
「…いいえ、ありがとうございます」
そう私を慌てて引き止める女性の表情が、少しだけ一息つかせてくれるようだ。
「煌ちゃ…、あ、私の彼氏って、さっきのバーテンダーなんだけど。
…って!その前に私は伽耶っていうの。よろしくね?」
パッパッと話が頓挫している様は、意外と慌てんぼうさん?かと思ってしまう。
「こちらこそ!私は」
とにもかくにも、そう微笑んでくれる伽耶さんにチョッとだけ親近感を覚えて。
「知ってる。のぞみちゃん――だよね?
…なーんて。さっき名前呼ばれてたのがバッチリ聞こえただけ」
ペロッと舌を出し、ワザとおどけてくれる伽耶さんだけど。
尭くんから“望未”と呼ばれた出来事を思い出し、ふとドキリと鼓動が高ぶった。
「あ、いえ――
でも、バーテンダーさんと伽耶さんのコト気づいてましたよ?」
ココで笑顔を浮かべて切り返せたのは、きっと彼女が他人だからだろう。
オマケに接客業の端くれも手伝って、彼女へと話題を振れた。
あの甘い雰囲気を放つ2人から、恋人同士と気づかない人はいないよね…?