この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
だけどこの手を離せない私は、なおさらズルいよ…。
「…何がしたいの?」
アルコール摂取済の体温はすぐに上昇して、イチイチ動きにドキドキするけど。
分かってる。こうして口角が上がってる時の尭くんは。
いつだって、私の反応を見て楽しんでるだけだから…――
「アホのうえにエロか?お前は」
「ち、違うもん…!」
「ああ、バカをつけるの忘れてた」
ほらほら、ついて出る言葉のドコに優しさなんてモノがある?
オマケにタクシーの運転手さんまで、なぜだか笑いをこらえてますが…。
「ばーか」
「く・・・っ」
吐き捨てられた残念すぎる一言で、やっぱり悔しさ交じりの声が漏れた。
この車内に蔓延した空気さえ、私をアホとバカ漬けにしたいのですか?
沈黙を免れたのはともかく、こんな状況もストレスフルでしかないよ。