この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


だけどこの手を離せない私は、なおさらズルいよ…。



「…何がしたいの?」


アルコール摂取済の体温はすぐに上昇して、イチイチ動きにドキドキするけど。


分かってる。こうして口角が上がってる時の尭くんは。


いつだって、私の反応を見て楽しんでるだけだから…――



「アホのうえにエロか?お前は」


「ち、違うもん…!」


「ああ、バカをつけるの忘れてた」


ほらほら、ついて出る言葉のドコに優しさなんてモノがある?


オマケにタクシーの運転手さんまで、なぜだか笑いをこらえてますが…。



「ばーか」


「く・・・っ」

吐き捨てられた残念すぎる一言で、やっぱり悔しさ交じりの声が漏れた。



この車内に蔓延した空気さえ、私をアホとバカ漬けにしたいのですか?


沈黙を免れたのはともかく、こんな状況もストレスフルでしかないよ。


< 88 / 178 >

この作品をシェア

pagetop