この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
また今回もフラれたに等しい私が、どんな気持ちか知らないクセに・・・
「タケルのバカやろぉ…!」
祐くんの登場で改めて乾杯し直すと、私のスイッチは完全にオンしたらしい。
「なにが、3番目だ…、ハハ…」
追加注文したビールをどんどん煽りながら、トラウマにも似た言葉で自嘲する。
「飲み過ぎ」
そんな私を見かねてか、隣から飄々とジョッキを取り上げてしまった男。
「うー…ん、まだ飲むの…!」
「今日はもうダメ」
ムっとして手を伸ばせば、ますますジョッキを遠ざけるからヒドイ。
「もー…、ゆーちゃんのバカぁ…――」
でも何とかして取り返そうとするのは、すっかり酔っ払っているせいだろう。
「アハハ、“ゆーちゃん”って」
「柚希はうるさい」
そんな私をよそに、相変わらず淡々とした雰囲気の2人を眺めているとひどく惨めだ。