この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
祐くんの話題に触れるだけで、こんなに息苦しい理由を知りたいよ…――
急にだんまりを決め込んだ私に、それから一切話し掛けて来なかった尭くん。
自分でも不思議なくらい、琴線に触れたように会話する気をそがれていたから。
考えている事などお見通しだろうから、ヘタに気遣われている気がしてならない。
今さらすぎるけど、幼馴染ってこういう時に嫌気がさすものだね…。
沈黙に包まれたタクシーから臨む、移ろいゆくネオンの景色を眩しく思いながら。
やっぱり、解せないキモチが取り巻くから困りモノだ。
いったい何なの…、このポッカリ穴が空いたような焦燥感は?
家柄が良くて仕事だって出来る祐くんに、“婚約者”がいるのは当たり前だろうし。
その相手が素敵な女性の蘭さんとくれば、あとはもう周りが褒め称えるだけのコト。
ほらね。おめでたい事実じゃない…、そう思わなきゃダメなのに――