この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
やっぱりアノ時、誘惑に負けて寝たコトだけが間違いだったんだ・・・
「着いたぞ」
「――え!?あ、ありがと」
ボーっとしていたからか、見慣れた街並みを捉えていた事すら気づかなくて。
「目開けて寝るなよ、アホ」
「ち、違うもん…!」
尭くんから冷たい一言を受けて、ようやく正気を取り戻した気がする。
柚ちゃんがかつて住んでいた、お洒落な外観のマンションこそが私の城。
柚ちゃんが引っ越す際、初めての一人暮らしに安全だからとそのまま受け継いで早1年。
実家からも柚ちゃん宅からも近いし、通勤にもすこぶる便利でお気に入りだ。
そのマンションが間近に迫り、タクシーがゆっくりスピードを落として近づいていけば。
「・・・え?」
思わず声が漏れ出たくらい、タクシーのライトが照らし出した姿に息を呑む。
ソレは間違えようもなく、昼間に見掛けたスタイルの祐くんだった…。