この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
エントランスで対峙する形はトライアングルのようで、明らかに普通の私は場違いだ。
今すぐこの場から逃げたいけど、2人からの視線が恐ろしくて動けない…。
そんな心情を読み取られているらしく、フゥ…とひとつ息を吐いた祐くん。
「やーっと折れたと思えば、ワケ分かんねぇ電話して来て勝手に切るし。
それで仕事終わりにぶっ飛ばしてやって来たら、のんは他の男と呑気にデートですか?」
「ほ、他の男って何よ?尭くんは…」
“のん”と呼ばれるのは当たり前だったのに。
3日ぶりの祐くんの呼び声を聞くと、ヤケに心を揺さぶって仕方ない。
ソレを悟られないように、彼の言葉を否定してヘラヘラ乾いた笑いを浮かべると。
「――男だろ」
「っ・・・」
すごく美味しかったマルガリータの余韻を失せさせるように。
眉根を潜めて私を見据える祐くんの瞳が、初めて怖く感じてしまった。