バイオテロ~小さな命が教えてくれたこと~


コツコツと薄暗い廊下に響くヒールの音。
天井近くの細長い窓から昼間特有の光が射している。

その反対側ではガラス張りの向こうで組織科学班が何やら実験をしている。
その人工的な光もまた、薄暗く狭い廊下を照らす。



「先輩!」

「……」

「先輩!!」

「………」

「だんだん歩くの速くなってンすけど」

「………それで」

「∑?くらいつけてください!思いっきり聞く気ないっスよね」


後を追いかけてきた後輩に振り返ることもなく。
黒いコートをなびかせる。


「日本へ渡る日取りが決まってるとのことッス」

「………今日いっぺんに言えよ、あのハゲ」


止まることなく、後輩の言葉も重要な部分だけ聞いていた。

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