三日月の涙
三日月
人っていうのは、いざって時にこそ落ち着いているもんだと聞いた事がある。
多分、今がそれだ。
目の前には、女の背中。
その細い背中には赤黒い穴が空いてて、体が傾いたと思えば、ゆっくりと倒れ込んだ。
視界が晴れて、前に男が居る事に気付いた。
男は銃を構えていて、銃口からは、微かに煙が出ている。
あぁ、この女は撃たれたのだ。
人が目の前で死んだのに、俺はひどく落ち着いている。