三日月の涙
 
男がリボルバーを回す。
カチッというきれの良い音が、瓦礫ばかりのこの空間に、虚しく響いた。
 
 
 
「じゃあな。」
 
 
 
そう言うと男は、俺に向けていた銃口の狙いを変え、自らの右のこめかみを撃ち抜いた。
 
そして、俺は取り残された。
 
手や顔に付いた、大量の血。
 
 
瓦礫と生臭さの中で、星の無い夜空の月だけが、ぽっかりと俺を照らして見つめていた。
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop