お姫様の苦悩
また誤解されないように、どういった経緯でこうなったのか譲さんに話そうと、カバンから携帯を取り出した。





「エレベーター内だと電波届かないぞ。」


「あ、そっか。」





そう言った数十秒後には兄の部屋があるフロアに着き、エレベーターを出る。





「ちょっと電話していい?」


「ああ、彼氏か。貸せ、俺が誤解のないように話す。」





手を差し出した兄を怪訝に見上げるが、私が言うより原因である本人……兄に言ってもらったほうが説得力があるかと思い携帯を渡した。





歩きながら携帯を渡し、部屋に入る兄に続き私も部屋に入る。





ドサリとソファーに座った兄の向かいに私も座り動向を監視する。




「名前は?」


「若王子さんで登録してる。」


「あだ名?」


「本名だよ。」


「ふーん……。」





譲さんの電話番号を見つけたのか、携帯を耳に充てる兄をジィーっと見つめる。




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