お姫様の苦悩

｢ごめんね。随分待ったんじゃない?｣


｢いいえ、大丈夫です。｣





目の前に座った譲さんを直視出来なくて少し視線を逸らす。





伝えなくちゃいけないんだけど、胸がいっぱいで言葉が出ない。





定員さんが持ってきた水が注がれたグラスは譲さんの前に置かれる。





｢芹沢に聞いたんだけど、話があるんだよね?｣


｢はい………。｣





譲さんの顔を見ると無理に笑っているように見える。





｢あ、の…………。｣


｢ハッキリ言ってくれていいから……。今日で最後にするよ。｣


｢最後……って?｣


｢もう関わったりしないって事。けど、俺が引っ越すのはもう少し待ってくれないかな?｣





え―――――えぇ……勘違いしてる。





｢譲さん。｣





もう最後なんて言わないで……。




関わらないなんて言わないで……。





｢好き―――――譲さんが好きなんです。｣





引っ越すなんて言わないで………。