コール ミー アゲイン~そらへこの想いが届くように~
―真李耶の決意―


 ぺたん、ぺたんと柔らかく足音を立てて、私はゆっくりと薄暗く冷たい牢かを歩んだ。


 黒い影がすっくりと立つ。


 こちらをみている。


「よっちゃん……?」


 彼は無言で跪き、私のウエストにすがりつくように嗚咽した。


 こんな彼を見るのは初めてだった。


 彼はいつも私の上からの視線で、いたずらっ子みたいに目を細めて笑っていた。


 それがすごく、すごく好きだった。


 私は彼の肩を抱きしめ、言うべき言葉を探した。


 今、言わなくてはならないことを。


「なるべく大声で呼びかけてあげてください」


 発作で意識がなくなってから、しばらく。


 彼のお父様が病院のベッドに横たわり、もう、いろいろな計器が繋げられていて、呼吸器ももう、なにもかもが無理矢理、死の危険から彼を引きはがそうとして必死のように見えた。


『親父はまだまだ、やりたいことがあったんだ。子供だってオレが抱かせてやりたかった』


 そして彼は唇をかみしめながら、震える手でお母様の背をさすっていた。






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