昼下がりの当番表
睦月佑哉、来室
2年生1日目、昼下がり。
今日の主な予定だった始業式と新しいクラスでのHRが終わり、いつもより少し早目の放課後が始まる。
部活に行く人、帰り道を急ぐ人、教室に残って友人と談笑をする人。
だいたい、高校生活が一年間をぐるっと回れば各自放課後の過ごし方は定着する。
それは私も同じだった。
ただし、私の場合は他の人とは少し違う過ごし方だけど。

「あれ、ひばり?もう帰るの?」

足早に教室を去ろうとして、友人のひとりに呼び止められた。
振り返って、手を振る。自然と顔が綻ぶのが止まらなかった。

「ううん、図書室!2週間ぶりなんだ。また、明日!」

納得顔で手を振り返されて、今度こそ教室から飛び出す。
意気揚揚、そんな四字熟語がぴったりな今の気持ち。
新しい教室から図書室までは、1年生のころと比べて少し距離が縮んだのが嬉しい。
浮足立ち、スキップさえしそうになる足を必死に抑える。
図書室に近づくと、扉にステッカーが貼ってあるのが目に入った。

『司書教諭外出中』

最近、司書の先生は外出が多い。
いくら図書委員が有能だからと言って、サボり過ぎじゃないかな。
軽く肩をすくめてから、辺りを見回す。
昇降口から離れた図書室の場所柄か、人の気配はない。
確認をしてから、鞄から巾着をだした。
中を探って取り出した鍵をカギ穴に差し込む。

ガチャリ、小気味いい音とともにもう慣れた感触が伝わってくる。
いつもより丁寧に鍵を抜いて巾着にもどした。
そしてステッカーをひっくり返す。

『図書委員在室中』

見慣れた文字に満足げに頷くと、ドアを引く。
がらり、扉は仕方ないから開いてやろうと言いだしそうな腰の重さでゆっくりとスライドした。
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