昼下がりの当番表
室内は、春の昼下がりらしい木漏れ日で柔らかい明るさに満ちている。
かなりの数の本棚を埋める蔵書の背表紙に午後の陽が揺らめく。
ひばりは、胸が弾むのを抑えきれなかった。
元来、この場所の雰囲気が好きなのだ。
放課後の図書室にはない輝く温もりを肌に感じると、どこか新鮮な気分になる。
ゆっくりと、空気をかみしめるように本棚の間を歩いた。

今日は、どれから読もうかな。この前読んだシリーズの続きは返ってきてたっけ。

丁重に数冊の本を選び、抱える。
定位置である貸出カウンターまでの距離、どの本から読んでいこうか思考を巡らす数歩さえ心弾む時間だ。
とにかく、この場所はひばりにとっての幸福にあふれている。
久しぶりにカウンターの中。自分の定位置につくと、心の底から安心感につつまれる。
彼女にとって、図書室は憩いの場所だ。
もちろん、友人と教室にいるのも楽しい。
しかし、それと同等、もしくはそれ以上に。

本と過ごす時間が、好きなんだよなぁ。

自分以外の誰かになって、何にとらわれることもなく世界に浸ることができるこの空間がたまらなく好きだった。

まぁ、難点をあげるとしたら。

ちらり、と重く静まり返る扉を見やる。
微かに苦笑が漏れる。

あんまり人が来ないことくらいかな。今日は、少しくらい来ればいいけど。
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