⁂ダイヤモンド⁂
全く、つかえない……。
部屋の目の前にきて、あたしの足は止まった。
今日に限って出ないんだから……
この様子じゃ、まだ店には来れないのだろう。
「よし、行くしかない!」
自分に気合いを入れ、あの男のいる部屋に入ると「未来さーん!!」という声が耳に入った。
「美波……」
そこには幸せそうに笑う美波
その横に、あの男があたしを見て笑っていた。
「なんで、起こしてくれなかったんですか~?」
「起きなかったじゃん」
「もう、罰金ですよ……」
少しだけ、美波がいてくれたことホッとして、あたしは美波の隣に腰を下ろした。
「酷いなぁ、未来ちゃん俺のこと拒否?」
さっきの男は別人かと思うくらい、声が高くなり優しそうな口調で話してる男に美波の視界に入らないように睨みつけた。
「もう、未来さん…光くんの隣に座って下さいよぉ…今日はお客様なんですから」
騙されてるよ
この場でそう言った所で奴はきっと上手く丸めこむだろう。
黙って立ち上がると“光くん”の隣に移り、あたしはタバコを加えた。
「光くんが店に来るなんて初めてだからビックリしたよぉ」
いつもに増して甲高い声が頭を直撃してキンキンしている。
「美波ちゃんの仕事している姿を見に来ようと思って」
甘い声そう言った“光くん”の横で、火を付けようとしていたあたしの手が自然と止まった。
「嬉しいっ…ありがとう」
美波の照れている顔を見て、あたしはため息をつきながら肩をおとした。
あたしのしている仕事
この男のしている仕事は同じだ
だけど、美波の笑顔を見てるとあたしの胸が痛むのはなぜだろう。
静かにタバコに火をつけると、煙を宙に向かっておもいきり吐いた。