⁂ダイヤモンド⁂


「おはようございます」


トイレに向かう途中で店長にすれ違ったので立ち止まって深くお辞儀をした。


あたしのドレス姿を見て「そうか…今日で5年目になるのか」その言葉に、あたしは笑い返した。


「これからも頼むぞ!未来!!」

「分かってる」


そう言いながらトイレに入ると大きな鏡の前で自分の姿を見つめた。



「未来さん、おはようございます」

「あ、おはよ……」



一人になりたかった。

それが今の心境……。


そんなあたしの気持ちなんて知る由もなく、あたしに話しかけてきた女の子は、最近入った新人。



“美波”

簡単に言えば、この店で唯一あたしにからんでくる女。
出勤して早々、トイレで出くわすなんて、ついてないなんて思いながらも、

「うわぁ〜なんで未来さん、今日、ドレス白なんですか〜?初めて見たぁー♪」

この子のテンションはそんなあたしの気持ちを知る術もない。

「あんま着ないからね」

「ばえるー♪やっぱりどこかオーラがありますね。もっと白、着たほうがいいですよー☆」


テンションの高い、苦手な目の前の女にさえ作り笑いをして、先にトイレから出た。

< 11 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop