⁂ダイヤモンド⁂


「はぁ……」


黒服の後に続きながら、もう何度ため息をついたか分からない。


「未来、お疲れ」

店長がなぜか嬉しそうに言っているのを見て、おもいきり睨んだ。


「あいつさ……」

「くせ者だな」


言いかけようとしたあたしに続いて店長がそう呟いた。


「えっ?」



「あいつは何かあるよ、そんな気がしてならない」


その真剣な顔に思わずその後に続く言葉が見当たらなかった。


確かに、あたしをからかいに来てるかもしれないけど、きっとそれだけじゃない何か企んでいそうだ。



「次、行きますね」


その間に黒服が入ってきて「安藤さんのところで・・・」そう言った。


あたしは待機室に戻り、自分の姿を鏡の前で確認するとキツイ顔をしている姿が見える。

少しはにかんでみたが、それはわざとらしくて、肩をおとした。


『あいつは何かあるよ、そんな気がしてならない』


あの男も確かに気になるが、あたしには店長のその言葉の方がよっぽど気になった。


「未来さん行きますよ」


「あ、うん」


黒服の後に続きフィールドを歩いていると、いつものように手をふる安藤さんの姿が目に入った。



遠目からだが、あたしも咄嗟に笑顔を作り微笑んだ。

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