⁂ダイヤモンド⁂
「お~未来ちゃん、今日も綺麗だね~☆」
甲高い声を張り上げながら、毎回同じセリフを放つ、秋山さん。
あたしが、5年前初めて着いた席のお客さん
あたしの5年間をずっと見てきたお客さん
「ありがとうございます」
お礼を言い、慣れた手つきでお酒を作りながらも、次に着く席を見渡していた。
「5年か……」
タバコをくわえ加えた秋山さんにすかさずライターで火をつける
「何か学んだものや手に入れたものはあったのか?」煙をあたしの方に向かって吐き出し、それを上手く笑った。
「………」
「ないのか?」
顔を覗き込まれた瞬間、思わず笑顔を作る。
「……自分です」
「自分……?」
「そう、自分を手に入れました」
秋山さんは首を傾げながら笑うとあたしの頭をポンポンと叩いた。
「そんなもの、初めから持ってるものだろ」
「いただきます」
グラスを手に取り、秋山さんのグラスに乾杯して、あたしも笑った。
あたしは、この店でー未来ーという自分を手に入れたんだ。
それだけ。
たった5年間で得た、たった1つのもの。