⁂ダイヤモンド⁂
『人には馬鹿にされるくらいが丁度いい』
あたしにとって馬鹿にされることはとても屈辱的なこと。
あれは、この世界に入ってすぐの出来事だった。
「こんな仕事やってるなんて、やっぱり馬鹿な女ばかりだな~!!あはははっ」
少しくらいの客の暴言は笑ってすませてきたあたしでも許せなかった言葉だった。
この世界にいる女の子たちは少なからず、何かを抱え生きている。
他の人間に興味がないあたしでも、この世界にいる以上それは分かってしまう。
「だったら来るんじゃねぇーよ!!」
「なんだよ、このクソ女!!」
「馬鹿じゃねぇーんだよ!!」
そう言いながら目の前にあったお酒の入っているグラスをそいつの頭からぶっかけた。
一瞬の出来事だった。
「てんめぇ~この野郎!!どう落とし前つけえるんだ!!こうゆう店にいる女はレベルが低すぎるな!!」
男は立ち上がりテーブルをひっくり返すと、ボトルやグラスが割れそれを蹴り上げながら罵声を上げ、店を出て行った。
あたしは、茫然と立ち尽くしていた
周りからの視線がみんないっせいにあたしに向けられ、ヒソヒソ話し始めた。
「お前らのことも言われてんだよ!!」あたしはドレス姿のまま店を飛び出した。
履いていた15センチはあろうパンプスを手に持ち、人ごみをかき分け必死に走った。
悔しくて、
情けなくて、
腹立って、
あたしが輝ける世界はこんな場所なんかじゃないと……
気づいたら、あの日店長に拾われた場所で座りこんでいた。