⁂ダイヤモンド⁂
「今日はありがとう」
「おう、5年目だからな盛大にやらないと」
とっさに肩を叩かれたが、あまりにも力が入っていて体が一瞬ふらついた。
「飯、ちゃんと食え!!健康には気をつけろよ!!」
「ぶっ、お父さんみたい!しかも、いつもはそんなこと言わないくせに」
少しだけ真剣な顔をした秋山さんにあたしは首をかしげた。
「よし、じゃあ行くよ!!頑張れな」
「うん、ありがと!!またねっ!!」そう手を小さくふると秋山さんは店を出て行った。
いつもなら、何度も何度も振り返りあたしに向かって名残惜しそうに手を振るのに、今日はあたしに背を向けたまま片手をあげてた。
やっぱり、秋山さんの後ろ姿は寂しそうだった。
みんな何かを抱え生きているのだろう。
埋まらないなにかを埋めたくて必死に……
あたしは?あたしは一体どうなんだろう。
あの時のあたしは確かに満たされていた。
今思えば、幸せなやつだったのかもしれない。
今のあたしは……
何を埋めたいのかもわからない。
そして、何に満たされたいのかも……。
ただ、毎日を生き続けているだけで、過ぎゆく時の中で何の目標もなく、なんの楽しみもない。
幸せを感じる時もなく。
それでも今日は少しだけ秋山さんの言葉になんだか癒されている自分がいた。
“それを未来に癒されに来ているんだよ”
寂しそうな秋山さんの後ろ姿を見つめながら“今度はあたしが元気を与えてあげよう”そう思いながら店の中に入って戻った。