⁂ダイヤモンド⁂
「お疲れ様です!!」
「お~未来、飲みに行かないか?」
店長の言葉に「今日は……」と答えると「今日も、だろ?」と笑いながら言われ、引き攣っているだろう笑顔で返した。
「お、じゃあ、今日はお疲れ様な!!おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
軽くお辞儀をすると、店を出てすぐさまバッグを取り出し携帯を取り出した。
どうしても気になることがある……
電話帳を開くとスクロールして名前を探しては通話ボタンを押した。
ーープルルルルルーー
ーープルルルルルーー
呼び出し音が鳴り続ける。
それでも、あたしの指は切るボタンを押すこともなく、ただただ出ることを願っている。
こんなにも、しつこく呼び出し音を鳴らし続けたことはなかっただろう……。
その音は次第に、どこの誰だか分からない女の人のアナウンスが流れ始める。
「ただいま、電話に出ることができません……」
そのどこの誰だか分からないアナウンスは、用事があるならメッセージを残すようにと親切に教えてくれた。
だけどなんと言って残せばいいのか分からないあたしは、ようやく切るボタンを押した。
「秋山さん……」
思えば、今まで5年間も店に来てくれていたのに、あたしからは一度もこうして電話をしたことなんてなかった。
『未来が電話してくることなんて一生ないだろうなぁ』
そんな風に少し悲しげな表情をしていた秋山さんの顔が浮かぶ。
なんだか胸騒ぎがしているんだ。
どうしても今、電話をしなくちゃいけない。
そんな衝動に駆られながら、何度も何度もかけ続けてはアナウンスが聞こえた瞬間に電話を切った。